イベント2日目には、今回のフォーラムにおける初の試みとしてシグネチャーイベント「スタイル&カラートロフィー」第一回インターナショナルグランドファイナルが実施され、世界13カ国から予選を勝ち抜いてきたヘアサロンチームによるコンペティションが会場を沸かせました。このメインステージアーティストとスタイル&カラートロフィー審査員に日本のカキモトアームズ 岩上晴美氏が大抜擢され、アジア人初の大役として大きな注目を集めました。
岩上晴美さんにインタビュー
- Q:今回プレゼンテーションされた“Personalize Your Color”の具体的な内容を教えてください。
- 6名のモデルを通じて、”Easy & Quick(イージー&クイック)を3つ”、kakimoto armsが提案するハイライトテクニック”Jessica Lights(ジェシカライツ)”を3つ、発表しました。
“パーソナライズユアカラー”というテーマだったので、Easy & Quickではホイルの枚数を10枚までに限定し、ヘアスタイルのデザインポイントに10枚以内のホイルワークを入れる「デザインに合わせたヘアカラーデザイン」を行いました。
Jessica Lightsは360°どこから見てもどんなヘアスタイル(ミディアムレングスからロング)にも似合う、アレンジをしても風にふかれてもきれいに見えるスタイルとして提案しました。
ホイルワークのテクニックは無限で、パーソナライズカラーというのはその人それぞれの顔形やヘアデザインに合わせてカラーリングを提案することですが、世界中どの国の女性達もバックグラウンドはさまざまです。そのライフスタイルや価値観の中でも、特にスピーディーに短時間でイメージを変えたい方と、時間もお金も気にせずにとことん自分のなりたいスタイルにこだわりたい方、大きく分けるとこのどちらかだと思うので、それぞれに合ったヘアデザインができるようこの2つに絞り込んで“パーソナライズカラー”をプレゼンテーションしました。
- Q:ステージの構成を教えてください。
- まずは英語でご挨拶し、kakimoro armsのヘアカラーの考え方を映像でご紹介、その後モデル6名が登場し、会場の皆様にデザインを見てもらったあと、具体的なEasy & Quickのプレゼンテーションとして“Miranda Lights(ミランダライツ)”、“Nape Fringe Lights(ネープフリンジライツ)”、“3D Lights(3Dライツ)”のプレゼンテーションを行いました。
これら3つは、顔周り、ネープ、表面というようにデザインポイントを絞ったEasy&Quickテクニックで、実際に仕込むときのBefore → Afterの写真、使用薬剤、テクニックを明記したパワーポイントでご紹介。ヘアデザインのカラーリングポイントを話しながら、チーフデザイナーの小林がステージ上で髪を動かすとデザインがでるということをデモンストレーションしました。
Easy&Quick
Miranda Lights ・・・ミランダライツは顔周りのヘアデザインのため髪の毛をかき上げて見せたり、耳にかけたりしながらカメラを通してアピールしました。
Nape Fringe Lights ・・・ネープフリンジは、リバースにヘアデザインをしない限りハイライトがあまり見えないのですが、リバースに巻いたり、編み込みのアレンジでハイライト部分を見せました。
3D Lights ・・・3Dライツは表面からわかりやすいデザインなので、コーミングをしてハイライトを見せつつウィービングテクニックを披露するため実際に2枚ホイルワークを実演しました。この時、表面の2枚を「カバーリング」といって2mm残すことの大切さと、“brick work(ブリックワーク)=レンガを積み重ねるようにチップとチップの間にチップを入れるウィービング”の大切さを伝えました。これら3つのテクニックがeasy&quickです。
Jessica Lights
モデル3名登場。ジェシカライツで大切なのがセクショニングということで、ステージ上でセクションに分けてくるくるくると巻くセクショニングのテクニックを見てもらいました。顔周りのハイライトがとても重要なので、顔周りのハイライトスライスのいい取り方、悪い取り方、ヘアラインのホイル、チップの取り方、W2mm×D2mm×S5mmの間隔でとっていくということをデモンストレーションしました。ムービーカメラマンによってもらって顔周りのスライスを取る、チップを取るという部分を皆様に見てもらったのですが、一番会場が沸いた部分でもありました。
次に、ジェシカライツの特徴として“毛先の先までハイライトを見せる”という部分が大切になってくるのですが、このときW3mm×D3mm×S7mmのベーシックハイライトをとったあとに深いチップを取る“バタフライチップ”というハイライトテクニックをみてもらいました。
これらはkakimoto armsのカラーリストはキャリア2年目から20年目の者まで全員が共通してできるテクニックです。リタッチやハイライトデザインは再現性が難しいといわれていますが、このセクショニングのおかげで同じところを同じように取り、伸びた2cmだけをリタッチすることを可能にしているのがこのセクショニングです。元々ヨーロッパから(ロンドンから)もらった技術ですが、今回世界大会を見せていただいたところ意外と世界の美容師さんは、easy&quickよりももっとイージーな1メイクべた塗りのゾーンカラーやインパクト重視のカラーが多かったです(笑)。
私たちは、明日サロンに帰ってすぐに使えるテクニックということを念頭に置いて、テーマにある“パーソナライズ”にこだわったプログラムを実直にご提案しました。これはかえって海外の方には新鮮に映ったかもしれませんね。
- Q:舞台に立たれた感想はいかがでしたか?
- ここまで大規模な表舞台で仕事をするというのは私自身初めてでしたし、kakimoto armsとしても15年ぶりくらいのことでした。世界のステージにkakimoto armsがチームで出演できたことは本当にいい経験というか、今後に向けていいチャンスになったと思います。
また、カラーリストとしてメインで舞台に立たせていただいて、これまで本当に頑張ってきてよかった!と心から思いました。挨拶だけでしたが英語で話すということが楽しい!と思えましたし、今後下手でもいいから自分の言葉で話せるよう英語にもトライしていきたいです。一堂50か国の方々に自分たちの仕事を見てもらうことができる機会もなかなかないですし、すべて貴重な経験となりました。
また、海外ならでは!と感動したのが、演出の至る所に見える粋な計らい。特に、各日ショーの最後は出演者やジャッジに携わった人をねぎらって舞台上に上げていたのですが、最終日は「ここに集まってくれた世界各国の皆様のおかげでこのビジネスフォーラムは成功しました。」といいながら観覧者全員を舞台に上げ、その先にある幕が開くとガラパーティーへの入り口になっているという素晴らしい演出でした。このセンスの良さはさすがロレアル!と感じました。
みんなを大切にしているファミリー感や、ウェルカム感、サンクス感といった温かい気持ちが関わる人からいつも感じられます。これはどの国のロレアルに行っても感じます。これがロレアルの文化なのでしょうね。
- Q:スタイル&カラートロフィーの審査員も担当されましたが、参加国のレベルはいかがでしたか?
- すごく高かったです。これまで見てきたコンテストよりもスタイル&カラートロフィーのほうがリアルな感じがしましたし、トータルルックとしておしゃれだなと感じました。
- Q:カラーアワードで選んだアイルランドチームがチャンピオンになりましたが、選んだ基準は何でしたか?
- まず、トータルですね。自分の中で、カラーリングに目が行くカラーはいいカラーではなく、女性として「おしゃれ」と感じるインパクトのある人が本当に素敵なカラーをしていると思っています。そういう意味でメイクアップやファッション、ヘアスタイリング、モデル自身のクオリティもすごく高かったと思います。
ジャッジの際、最初に見た瞬間にすごくおしゃれ!と思って目を引いたのがアイルランドチームのあのモデルでした。次にアワードを決める時に改めてカラーを見直してチェックしていった時もやっぱり彼女が一番かわいかったです。テクニカル的にはホイルワークではなく、表面の根本と内側が同じ色味になっていて、表面の根本以外の部分は明るくしていました。
一瞬見たらワンメイクっぽく見えるスタイルですが、よく見たらテクニックも盛り込んでいて、かつモデルにとてもマッチしていたというのが選定ポイントとなりました。
- Q:今後、日本でのチャンピオンも参戦していくことになります。日本チームが優勝するためのアドバイスをください。
- まず目にぐっとくるのはモデルの身長が高いこと!そして、かわいいに越したことはないのですが、それ以上に自分のデザインがちゃんとデザインできるモデルを選ぶこと!ただカラーしただけ、ただ何かしただけではなく、トータルでデザインしていくイメージがすごく大事だと思います。モデル選考ならモデルの特徴を生かしたデザインをしていくのは当然ですが、ただ似合っているだけではおそらく勝てないので、そこにもう一歩違和感というか、インパクトがあるものを交えるといいですね。そこに「日本」というインパクトやオリジナリティは絶対に出していったほうがいいと思います。アジア圏は韓国、台湾、インドネシアが出場していましたが、みんな自国のモデルを起用していました。
また全体的な印象がソフトかハードかと聞かれたら、少しハードな強みのあるヘアデザインの方がより好まれると思います。もちろん通常のサロンワーク感覚ではなく、コンテストよりにマインドをチェンジすることも大切です。モデルの骨格をさらに強調し、「自分で設計図を描きながらカラー・カットを融合させるヘアデザイン」という一歩踏み込んだオリジナリティのあるものができれば賞を受賞する可能性が出てくるのではないかと思います。
海外の作品は色の重ね方やブレンドの仕方がけっこう大味で、特別難しいテクニックではないと思われる作品が意外と多いです。日本人の繊細な技術と繊細な感性で作り出す色のブレンド感でクリエイションする面白い勝負ができるのではないかと思います。